マニュアル

現場で使えるカスハラ対応マニュアルの作り方|目次ひな形と初期対応の手順

規程を整えても、現場が動けなければ意味がありません。この記事では、カスタマーハラスメント対応マニュアルの目次ひな形を示したうえで、初期対応の3ステップ、そのまま使える言い回し、エスカレーションの基準、配布・研修・見直しの進め方を解説します。

公開日:2026年9月19日

就業規則とマニュアルの役割の違い

就業規則は「会社としての約束ごと」を定める文書です。一方マニュアルは、現場が困ったその瞬間に開いて、次の一手が分かる道具です。両方そろって初めて、カスハラ対策は動き出します。

就業規則・規程対応マニュアル
目的会社の方針と権限、禁止事項を定める現場の行動を具体的に示す
読む人全従業員・管理部門接客や訪問を担当する現場の人
書き方条文の形手順・言い回し・チェックリスト
更新頻度低い(改定手続きが必要)高い(事例が増えるたびに追記)

就業規則への書き方は「カスハラ対応を就業規則に書く方法と条文例」で解説しています。

マニュアルの目次ひな形(12項目)

厚生労働省の企業マニュアルの構成を踏まえつつ、現場で使う前提で絞り込んだ目次です。A4で10〜15ページ程度を目安にすると、読まれるものになります。

  1. 経営トップからのメッセージ(従業員を守るという宣言)
  2. カスハラとは何か(定義の3要素と、正当なクレームとの違い)
  3. 自社で起きやすい事例(業種に合わせた具体例を5〜10件)
  4. 初期対応の手順(謝罪の範囲・状況把握・報告)
  5. エスカレーションの基準(誰に、どの段階で引き継ぐか)
  6. 場面別の注意点(対面/電話/訪問先)
  7. 言ってよいこと・避けること(言い回し例)
  8. 対応を打ち切る判断(退去要請・通報の基準と手順)
  9. 記録の取り方(何を、いつ、どこに残すか。録音・録画の扱い)
  10. 相談窓口(連絡先、受付方法、相談後の流れ)
  11. 被害を受けたときのケア(業務の引き継ぎ、産業医・外部相談)
  12. 様式(対応記録票、報告書、警告文のひな形)
作るときのコツ

最初から完璧を目指さないことです。②③④だけでもA4数枚にまとめて配れば、現場の判断はそろい始めます。事例が集まるたびに③に追記していく運用が続けやすい形です。

初期対応の3ステップ

もともと単なる苦情だったものが、最初の対応のまずさでカスハラに発展することがあります。厚生労働省の企業マニュアルでも、初期対応は次の手順が示されています。

  1. 対象を限定して謝罪する:「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」のように、不快にさせたことに対して謝ります。事実確認ができていない段階で、会社の非を全面的に認める言い方は避けます。
  2. 状況を正確に把握する:相手の話を遮らず最後まで聞き、不明な点を確認します。じっくり聞くこと自体が、相手を落ち着かせることにつながります。メモを取り、要点を復唱して確認します。
  3. 上長・相談窓口に共有して指示を仰ぐ:要望の内容だけでなく、事実関係を時系列で報告します。判断は個人ではなく組織で行います。
この手順を飛ばしてよい場合

威圧的な言動など、明らかにカスハラと判断できる行為を受けた場合は、その場で上長に引き継ぎ、一人で対応を続けないでください。暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たり得る行為は、警察へ通報します。

そのまま使える言い回し例

場面使える言い回し
最初の謝罪「このたびはご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。詳しくお聞かせいただけますか」
確認に時間がかかるとき「事実を確認したうえで、改めてご連絡いたします。本日は○時までにご連絡いたします」
上長に代わるとき「私では判断いたしかねますので、責任者に確認いたします。少々お待ちいただけますでしょうか」
できないことを伝えるとき「ご要望には添いかねます。当社としては○○までの対応とさせていただきます」
大声・暴言があったとき「そのような言葉を続けられますと、対応を続けることができません。落ち着いてお話しいただけますか」
対応を打ち切るとき「本件につきましては、これ以上の対応はいたしかねます。お引き取りください」

避けたいのは、その場しのぎの回答と、過大な期待を抱かせる言い方です。「できること」と「できないこと」を早めにはっきり伝えるほうが、結果的にこじれません。

マニュアルの目次ひな形・就業規則の条文例を差し上げます

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エスカレーションの基準を決める

現場が抱え込む最大の理由は、「いつ上に上げてよいか分からない」ことです。次のような目安を数字で決めておくと、迷いがなくなります。

  • 時間:同一案件の対応が30分を超えたら上長へ引き継ぐ
  • 回数:同じ内容の連絡が3回続いたら組織対応に切り替える
  • 言動:暴言・威圧・身体的接触があった時点で即引き継ぎ、記録を開始する
  • 要求:金銭、土下座、私物の提供、個人情報の開示を求められたら即引き継ぎ
  • 人数:悪質性が疑われる場合は単独対応をやめ、複数名で対応する

数字は業種によって変わります。大切なのは「現場が自分で判断しなくてよい状態」を作ることです。

場面別(対面・電話・訪問)の注意点

対面のとき

  • 店頭でそのまま対応せず、時間・人・場所を変えることを検討する
  • 原因がはっきりしない段階で、推測による説明をしない
  • 周囲のお客様への影響が出ている場合は、早めに場所を移す

電話のとき

  • 通話を録音できる状態にしておく
  • 第一受信者が責任を持ち、たらい回しにしない
  • 長時間化したら「改めてご連絡します」と伝えて一度切る

訪問先のとき

  • 一人で訪問する業務では、位置情報と連絡手段を確保しておく
  • 危険を感じたら、その場を離れることを最優先にする
  • 会社側は、緊急連絡を受けたら即応できる体制を決めておく

配布・研修・見直しの進め方

  1. 全員に配る:正社員だけでなく、パート・アルバイト、中途入社の方にも入社時に渡します。
  2. 短い研修をセットにする:30分で構いません。トップメッセージ、自社で起きやすい事例、初期対応の手順、相談窓口の4点を伝えます。
  3. ロールプレイを入れる:実際の場面を想定した練習をすると、いざというときに言葉が出ます。
  4. 年1回見直す:実際に起きた事例を追記し、使いにくかった部分を直します。
相談窓口の担当者にも研修を

窓口には、カスハラに該当するか判断に迷う相談も持ち込まれます。担当者が一人で抱え込まないよう、対応の手引きと、現場・法務・外部専門家への連携ルートを用意しておきましょう。

記録の取り方をマニュアルに入れる

初期対応の手順でも、悪質性が疑われる場合には録音・録画、対応記録、時間の計測など、第三者が検証できる記録を残すことが示されています。一方で、対応の最中にメモを取り続けるのは簡単ではありません。

マニュアルには、次の3点を必ず書いてください。

  • 何を残すか:日時、場所、相手の言動、要求内容、対応者、対応内容、所要時間
  • どこに残すか:対応記録票の様式と提出先
  • 録音・録画の扱い:実施する場合の目的、保存期間、閲覧できる人。個人情報保護法に沿った取扱いを明記します

そのうえで、記録を「人の努力」に頼らない形にできれば、現場の負担は大きく下がります。

記録と抑止を、名札ひとつで

ネームプレート型カメラ
CareMemory(ケアメモリ)

胸元に着ける名札型のウェアラブルカメラです。対面の状況を映像と音声で記録し、「録画中」の表示で行き過ぎた言動そのものを抑止します。

  • 映像に日時・端末番号・スタッフ番号を自動で記録
  • 訪問先でもGPSで位置と移動の軌跡を記録
  • 危険を感じたらSOSボタンでワンタッチ通報
  • 権限を持つ人だけが記録を閲覧できる管理
CareMemoryを詳しく見る
ネームプレート型カメラ CareMemory本体と管理画面

よくある質問

マニュアルは何ページくらいが適切ですか?

現場に配るものはA4で10〜15ページ程度が目安です。それ以上になる場合は、携帯用の要約版(初期対応の手順とエスカレーション基準だけの1枚)を別に作ると使われやすくなります。

厚生労働省のマニュアルをそのまま配ってはいけませんか?

考え方を学ぶ資料としては有用ですが、そのままでは自社の窓口名や業種特有の事例が入っていません。自社の連絡先・判断基準・事例に置き換えることで、はじめて現場で使えるものになります。

録音していることをお客様に伝える必要はありますか?

法律上の一律の義務ではありませんが、個人情報の取扱いの観点からも、掲示や名札表示などで事前にお知らせする運用が望ましいと考えられます。伝えること自体が抑止にもつながります。

小さな店舗で、責任者が常にいない場合は?

現場対応者だけでも基本の対応ができるよう、初期対応の手順と「これ以上は対応しない」という線引きを事前に周知しておきます。あわせて、電話などで即座に相談できる連絡先を決めておきましょう。

出典・参考

※本記事は2026年9月時点の公表資料をもとに、一般的な情報として作成したものです。記載の例は例示であり、実際の運用にあたっては自社の状況に合わせてご検討ください。

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