カスハラ対策の基本

カスハラ対策が2026年10月1日から義務化|企業がやるべき10項目をわかりやすく解説

改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、すべての事業主の義務になります。「何を」「どこまで」やれば義務を果たしたことになるのか。厚生労働省が示した指針をもとに、定義・措置義務10項目・法的リスク・準備の進め方を整理しました。

公開日:2026年9月19日

2026年10月1日、何が義務になるのか

2025年6月に労働施策総合推進法が改正され、カスタマーハラスメントについて、事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されました。施行日は2026年10月1日です。

具体的に何をすればよいかは、2026年2月に告示された「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号。以下「指針」)に示されています。

対象になる企業・働く人
  • 労働者を雇用するすべての事業主が対象です。企業の規模や業種は問いません
  • 守られる労働者には、正社員だけでなくパート・アルバイトなどの非正規雇用の方も含まれます。
  • 「顧客等」は一般消費者に限りません。取引先も含まれるため、BtoBの企業も対象です。
  • 対面だけでなく、電話やSNSなどインターネット上の言動も対象になります。

カスハラの定義は「3つの要素」で決まる

指針では、職場におけるカスタマーハラスメントを、次の3つをすべて満たすものと定義しています。

  1. 顧客等の言動であること(顧客、取引の相手方、駅・空港・病院・学校・福祉施設などの利用者ほか、事業に関係を有する人の言動)
  2. 社会通念上許容される範囲を超えていること(労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして判断します)
  3. 労働者の就業環境が害されるものであること

ここで大切なのは、苦情や要望のすべてがカスハラになるわけではないという点です。商品やサービスへの正当な意見は、企業にとって改善のきっかけになる大切な情報です。カスハラ対策は「お客様の声を遮断する取り組み」ではなく、正当な声には真摯に向き合いながら、行き過ぎた言動から働く人を守るための仕組みづくりです。

「社会通念上許容される範囲を超えた言動」の例

言動の「内容」が範囲を超えるもの「手段・態様」が範囲を超えるもの
・そもそも要求に理由がない、または商品・サービスと全く関係のない要求
・契約などで想定しているサービスを著しく超える要求
・対応が著しく困難、または対応が不可能な要求
・不当な損害賠償の要求
・身体的な攻撃(暴行、傷害など)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要など)
・威圧的な言動
・継続的、執拗な言動
・拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)

なお、障害のある方が合理的配慮を求める意思表示は、カスハラには当たりません。消費者の権利や、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止にも留意が必要です。

企業が必ず行う措置義務10項目

指針が事業主に義務づける措置は、次の5つの柱・10項目に整理できます。すでにパワハラ防止措置を整えている企業は、その枠組みを活かせる部分が多くあります。

5つの柱措置義務の内容
1. 方針の明確化と周知・啓発 ① カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する方針を明確にし、周知・啓発する
② カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する(管理監督者へ指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する、本社・本部へ情報共有する など)
2. 相談体制の整備 ③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
④ 相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする
3. 事後の迅速かつ適切な対応 ⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認する
⑥ 被害者への配慮のための措置を行う
⑦ 再発防止に向けた措置を講じる
4. 抑止のための措置 ⑧ 特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針をあらかじめ定めて周知し、実際に対処できる体制を整える
5. あわせて講ずべき措置 ⑨ 相談者等のプライバシーを保護する措置を講じ、労働者に周知する
⑩ 相談したこと等を理由に不利益な取扱いをしない旨を定め、周知・啓発する
他社の従業員に対するカスハラにも注意

自社の労働者が取引先など他社の労働者にカスハラを行った場合、その取引先から事実確認などへの協力を求められたときは、これに応じるよう努めなければなりません。「自社が被害を受けたとき」だけでなく、「自社が加害側になったとき」の備えも必要です。

罰則がなくても放置できない3つの理由

措置義務に違反しても、直ちに刑事罰が科されるわけではありません。しかし、次の3つの理由から、放置できる問題ではありません。

① 行政による助言・指導・勧告の対象になる

対応が不十分な場合は、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象になり得ます。勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性があります。

② 安全配慮義務違反として損害賠償を求められることがある

企業は労働契約法第5条により、働く人が安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。カスハラへの対応を怠った結果、従業員の心身に被害が生じた場合、この義務に違反したとして損害賠償を請求される可能性があります。従業員がケガをしたり精神障害を発病したりした場合は、労災保険の対象にもなります。

③ 離職・採用コストという経営上の損失につながる

「会社は守ってくれない」と感じた従業員の離職は、採用・教育のコストとして跳ね返ります。対応に追われる管理職の時間も失われます。カスハラ対策は、法令対応であると同時に、人材を守るための経営課題です。

自治体の条例にも注意

東京都のカスタマー・ハラスメント防止条例のように、自治体が独自に条例を定めている地域があります。該当する地域で事業を行う場合は、国の措置義務と条例の両方への対応が必要です。

どのくらい起きているのか(国の調査結果)

厚生労働省の「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、次の結果が示されています。

  • 過去3年間に、顧客等からの著しい迷惑行為について従業員から相談があった企業:27.9%
  • 過去3年間に、勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した労働者:10.8%

およそ4社に1社が相談を受けており、決して特別な出来事ではありません。接客・受付・介護・配送など、対面でお客様と接する現場ほど、備えの必要性は高くなります。

就業規則の条文例・対策マニュアルの目次ひな形を差し上げます

「何から手を付ければよいか分からない」という企業様向けに、就業規則に盛り込む条文例と、現場配布用マニュアルの目次ひな形をご用意しています。お問い合わせフォームの「資料請求」からお申し込みください。

施行に向けた準備の進め方

措置義務10項目は、次の順番で進めると整理しやすくなります。

  1. 基本方針を決める:カスハラには毅然と対応し、従業員を守るという会社の姿勢を文章にします。社内だけでなく、店頭やウェブサイトで社外に示すことも抑止につながります。
  2. ルールと対応手順を定める:どの段階で上司に引き継ぐか、いつ対応を打ち切るか、警察へ通報する基準は何か。悪質なケースの線引きを事前に決めておきます。
  3. 就業規則・社内規程に反映する:法律上は「定めて周知する」ことが義務で、就業規則への記載までは求められていません。ただし、不利益取扱いの禁止を定める方法として指針が例示しており、懲戒処分の根拠としても必要になるため、実務上は反映をおすすめします。
  4. 相談窓口を決めて周知する:既存のハラスメント相談窓口と一体で設けても構いません。「誰に」「どうやって」相談するのかを具体的に伝えることが大切です。
  5. 現場が使えるマニュアルを配布する:判断に迷う場面で開ける、短く具体的な手引きを用意します。
  6. 記録の取り方を決める:指針が示す対処の内容にも「対応の記録を残す」ことが含まれます。日常業務の中で無理なく記録が残る仕組みにします。
  7. 研修と見直しを回す:作って終わりにせず、年1回は運用状況を確認し、内容を更新します。

このうち③については「カスハラ対応を就業規則に書く方法と条文例」で、⑤については「現場で使えるカスハラ対応マニュアルの作り方」で、①については「カスハラ基本方針の作り方と例文」で具体的な書き方を解説します。

対策の土台になるのは「記録」

措置義務を並べてみると、多くの項目が「何があったかを正確に把握できること」を前提にしていることが分かります。事実関係の確認(⑤)、被害者への配慮(⑥)、再発防止(⑦)、悪質なケースへの対処(⑧)は、いずれも記録がなければ判断できません。

ところが現場では、対応に追われてメモが残らない、後から「言った・言わない」になる、逆にこちらが加害者だと主張されて反論できない、といったことが起こります。だからこそ、記録は「問題が起きてから取る」のではなく、日常の業務の中で自動的に残る形にしておくことが重要です。

記録と抑止を、名札ひとつで

ネームプレート型カメラ
CareMemory(ケアメモリ)

胸元に着ける名札型のウェアラブルカメラです。対面の状況を映像と音声で記録し、「録画中」の表示で行き過ぎた言動そのものを抑止します。

  • 4G回線で管理者がリアルタイムに状況を確認
  • SOSボタンでワンタッチ緊急通報
  • GPSで位置と移動の軌跡を記録
  • 日時・端末番号・スタッフ番号を映像に自動で記録
CareMemoryを詳しく見る
ネームプレート型カメラ CareMemory本体と管理画面

よくある質問

小さな会社でも対象になりますか?

はい。労働者を雇用するすべての事業主が対象で、企業規模や業種による例外はありません。

就業規則の改定は必須ですか?

法律上の義務は、方針や対処の内容を定めて周知することです。社内規程やマニュアルでの整備でも義務は果たせますが、懲戒処分の根拠や不利益取扱いの禁止を明確にするため、就業規則への反映が実務上は推奨されます。

お客様との会話を録音・録画してもよいのですか?

厚生労働省の資料でも、対処の内容の例として対応の記録(録音・録画の活用を含む)が挙げられています。実施にあたっては、録画・録音を行っている旨を掲示や名札表示などで事前に知らせ、取得した記録の保管・管理ルールを定めておくことが大切です。

準備が間に合わない場合はどうすればよいですか?

まずは基本方針と対応手順、相談窓口の3点から着手するのが現実的です。この3つは互いに関連しており、決めた内容を周知するだけでも現場の判断のばらつきを減らせます。

出典・参考

※本記事は2026年9月時点の公表資料をもとに、一般的な情報として作成したものです。個別の事案の判断や規程の整備にあたっては、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

従業員の安心・安全と、業務支援のサポートを。

導入台数や運用方法に合わせてご提案します。お気軽にご相談ください。